パリの街角で見かけるグラフィティ
パリの街を歩いていると、様々なストリートアートやグラフィティを目にする。
日本で見かけた(今もある?)ような「夜露四苦」といったものは、メトロのトンネルやトラックの側面に描かれているのを見かけるが、一味違った可愛らしいと思ってしまうようなものもある。
普段、携帯の写真機能を使うのにすぐに考えが至らない私でも、ふと保存したくなってしまうグラフィティがパリにはたくさんある気がする。ディズニーキャラクターを捩ったようなものや、オリジナルの作品と呼んでしまいたくようなもの、きっと全て違法なんだろうけど、「こんなのもある!」と写真に納めたくなってしまう。
言いたいことを壁に
一方で、主張のあるものもたくさん見かける。
下の一枚は、イエローベスト運動(2018年11月から始まる石油増税に反対する社会運動)の時にとった写真。デモが行われていた毎週土曜日は多くの商店は閉店しガラスを割られないよう、板で保護していた。この頃、デモはシャンゼリゼ通り近くに集中していたのは確かだが、レピュブリック広場からデモが始まることも多かったと記憶している。撮影場所は、レピュブリック広場の近く。歯医者さんのガラスに張られた木製の保護板に、「マクロン、お前の歯を叩き割ってやる!(拙訳)」とある。
イエローベスト運動について、日本の報道では、デモの参加者のセンセーショナルな商店のガラスを割る、シャンゼリゼ通りの敷石を剥ぎ取って投げるなどの行動に集中していたような印象を持つが、フランスでは警察の暴力性(催涙ガスや空砲の乱用、暴力的なデモの制圧など)も問題になっていた。
政府の方針転換によってイエローベスト運動は徐々に収束していく。石油に対する増税案は、環境問題に配慮するという政府の方針から出たものだったが、公共交通機関の乏しい都市以外の地域や、物価が安いため地方に住み都市に働きに出ている人々、職業柄、車を必要としている人々、その多くは富裕層に属さない。この運動から、経済格差問題と環境問題を分けて考えることはできないと改めて感じた。フランスは、ディーゼルエンジンからハイブリットへの以降もまだできていない。月々の支払いで手一杯の人々に、新しい車購入を促したり、石油増税を提案したりするのは、無理な話でその怒りを表した一つの形がイエローベスト運動だったと感じている。
社会運動は続く…
2019年12月には、今度は政府が打ち出した年金改革に反対するストやデモが始まる。
下の一枚は、レピュブリック広場で撮ったもの。左側は、「資本主義は戦争だ。私たちは勝つ(拙訳)」、右側「マクロン、フランスはお前の娼婦じゃない(拙訳)」と書いてある。
この年金改革は、格差を広げてしまうことを危惧してRATPパリ交通公団(メトロやバスなどパリの公共交通機関を運営)や、SNCFフランス国有鉄道が主体となってストを実行し。長く続くストの間、いくら汚くても(!!)メトロは便利なものだなぁと改めて感じた。クリスマス休暇を境に、RATPやSNCFが動き出したが、新型コロナウィルスCovid19の世界的流行で、フランスは3月17日に外出制限措置が取られ、マクロン大統領は年金改革案の検討は一時保留と発表した。
フェミニスム運動に関連して
2017年から世界的に#Metoo運動や反フェミサイド運動が盛んとなったが、新型コロナウィルスの影響で女性に対するDVや、性暴力がより可視化された。フランスでは、DV被害を訴えられない状況にある人々に対し、薬局で「マスク19」といえばDV被害を被害者に代わり薬局が治安維持隊に通報してくれるシステムが整った。個人的には、2020年年始ごろから、以下のようなグラフィティを見かけるようになった。
こうしてパリの街を落書き(?)の視点から見てみると、社会の動きがわかって来ることがある。インターネット、新聞媒体、テレビ、ラジオ、SNSいろんなメディアがあるが、グラフィティもメディアの役割を持ってしまっているかもしれない。
2ヶ月の外出制限の間は、無闇に出歩けなかったが、自分の携帯の写真アプリを開くと楽しくなったり、社会を理解したりするきっかけとなるグラフィティが結構あるので、億劫にならずに写真を集めて行こうと思う。
最後に、一枚。
おわり